2010年6月1日火曜日

もうひとつの「政治とカネ」問題:機密費とメディア


メディアで活躍する評論家や記者、そしてジャーナリストたちが、政治家からカネをもらっているかもしれない。そのカネとは、もちろん国民の税金である。さて、この問題を私たち国民は、どう考えるべきだろう。

もちろんすべてが事実ではない可能性もある。しかしこれまで一部の報道機関で伝えられている内容をみるかぎり、安易に「がせネタ」と判定するべきではないだろう。

そもそも、事実がどうなっているのかということを追求することこそが、本来のメディアの役割ではないだろうか。しかし大手メディアのほとんどは、見ざる、聞かざる、言わざる状態である。

内閣官房報償費(機密費)については、以前から噂がちらほら出ていた。そこで2009年11月20日、平野博文官房長官は記者会見にて2004年度以降の国庫からの月別支出額を公表した。

自民党政権時代は、毎月1億から2億円が官房機密費として使われている。2009年8月30日に自民党が衆院選で惨敗した際には、その2日後の9月1日に麻生前内閣総理大臣が2億5千万円を引き出している。使途は不明ということだ。

そして民主党が政権をとった2009年9月から2010年2月までは、毎月6000万円、合計3億6千万円が官房機密費として支出された。そのうち未使用の1612万円は国庫に戻されたことも、5月14日に判明している。

民主党の海江田万里衆院議員は、2009年11月23日に出演した日本BS放送の番組で、10万円を受け取ったと認めている。細川政権発足後に訪中した際、当時の竹村正義官房長官から10万円が入った茶封筒を、同行した6、7人全員が受け取ったということだ。

そして、極めつけはこの人だ。2010年4月、1998年から99年に小渕内閣で官房長官を務めていた野中広務氏が、官房機密費を「毎月5千万~7千万円くらいは使っていた」と暴露した。
Asahi.comによると、首相の部屋に月1千万円、野党工作などのため自民党の国会対策委員長月500万円参院幹事長にも月500万円程度を渡していたほか、評論家や当時の野党議員らにも配っていたという。政治評論をしている人たちには、「盆暮れ500万円ずつ」届けていたということだ。ただし、ジャーナリストの田原総一朗氏だけは返却してきたらしい。
http://www.asahi.com/politics/update/0430/TKY201004300449.html

さらに5月31日、平野貞夫・元参院議員がJcastニュースの取材で、NHKの記者大手の新聞通信社に「接待」と称して毎月20万から30万円を使っていたと語っている。昭和40(1965)年の話なので、現在の価値にすれば軽く数倍にはなっている。特筆すべきはその内容で、赤坂や銀座の料亭からはじまり、ホテルで「女」まで用意していたという。ただし、朝日新聞の記者だけは応じなかったとも付け加えている。

平野氏はさらに、1994年の出来事も語っている。当時の羽田孜内閣で官房長官を務めていた熊谷弘氏から、30万円から50万円の現金が入った封筒を渡され、それをある有名な政治評論家へ手渡したという。平野氏は、野中氏の発言の信憑性についても、「非常に可能性が高い」と語っている。
http://www.j-cast.com/2010/05/30067532.html?p=1

ちなみに、Jcastニュース発行人である蜷川真夫氏は朝日新聞社出身で、『AERA』元編集長であることも付記しておく。

ジャーナリストの上杉隆氏は、この問題をこれからも追求していくと宣言している。


あくまで噂話にすぎないが、上杉氏をなんとかして潰そうという怪しい動きがあるらしい。
某大手放送局では、「何でもいい。上杉を潰せ。女でも経歴でもスキャンダルを探して来い」という指令まで出たとのこと。

英紙The Economistでは、かつて『機密費』という本を出版している国際政治経済情報誌「インサイドライン」編集長の歳川隆雄氏が、今でも機密費がメディアに流れている可能性は低いと語っている。ただし、現在普天間基地問題で揺れている沖縄では、接待費として惜しげもなく使われているという噂はあるらしい。


ここで、とりあえずまとめをしてみたい。

(1)機密費が存在することは、歴然とした事実である。しかし機密費があること自体は、必ずしも問題ではないだろう。いちばん重要なことは、大手メディアの関係者にカネがばらまかれていた可能性が非常に高いことである。

権力を監視するはずのメディアが、権力と癒着した「馴れ合い」状態では、健全な民主主義はとうてい成立しない。

(2)現在でも機密費がメディア関係者へ流れているかは、不透明。

今後も、この問題のゆくえを注目していきたい。

(3)機密費を受け取ったとされる政治評論家や、その他のメディア関係者の名前は公表されるべきだろう。

法的な裁きの現実性はともかくとして、倫理的な意味で実名公開は意味があるだろう。「当時はみんなやっていた」という言い訳もあるかもしれないが、それは過去を清算するのと同時に、公正な未来の社会への投資と考えるべきである。

(4)こういった問題が明るみになってきたことで、事実であったかどうかは別にして、たとえこの先メディアの人々がカネを受け取る機会があったとしても、慎重になる可能性は非常に高い。

少なくとも、これは正しい方向であろう。ただし、こういった報道がこれからもつづけられるという前提である。その意味では、前述した一部の報道機関には頑張ってほしい。そして私たちも、積極的にネットで取り上げるべきだろう。多くの人々が知れば知るほど、抑制へとつながっていくと思う。

(5)いずれにせよ、機密費の扱いは、たとえば20年から30年後に一般公開されるという法律を定めるべきだ。

機密費なので、どうしても国家として機密にしなければならないこともあるだろう。しかしそれが数十年後であれば、国家機密ではなくなるケースがほとんどでのはずだ。そして何よりも、後に公開されることが前提となっている機密費であれば、それを渡す人も渡される人も、倫理的な抑止効果がでてくることは間違いない。


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